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学者の休日(第一回)

マルガリータ『カクテル腕競べ』

学者の休日・・・と言っても、特にこれといったことをするわけではなくて、わざわざ書き記すようなこともさして無いのですが、ただ実はこう見えても僕はカクテルをつくるのが得意で、少々自信もあるのです。
気が向くと来客相手に、得意とする“マルガリータ”などを振舞ったりすることもあるほどです。
特にこの“マルガリータ”にはちょっとした個人的エピソードがあって、アメリカ留学中に師事したあの著名なベンソン先生(当サイト「心に残る学者たち」参照)と、日頃から互いに自分の作るマルガリータが世界一と譲らぬため、一体どちらの作るマルガリータが美味しいのか、或る時実際に作って決着をつけようではないかということになったのです。
・・・結果は、元々互いに譲らぬ同士、自分から相手を認めるわけもなく、内心やっぱり自分の方が上と自己満足の引き分けだったのですが、その後ベンソン先生が来日の折りに我が家で改めてマルガリータを振舞う機会があったのですが、彼はその時も何やかやと、やはり無条件には私のカクテルを認めませんでしたが、やがて後日、アメリカに帰国したベンソン先生から、或る“品物”が届きました―――なんと、それはメキシコ産の“岩塩”でした!!
ベンソン先生の言い分は、マルガリータの味の決め手は、グラスの縁に添える“塩”で決まるものだ、“先日の君のマルガリータ”も、決して悪くはなかったのだが、しかし更に味を豊かにしたかったら、その鍵はまさに君に送るこの“メキシコ産の岩塩”の味にあるのさ”ということのようでした。
やはり我が敬愛するベンソン先生、“敵に塩を送る”とはこのことかと、送られたその岩塩で作った“マルガリータ”を味わいながら、ライバルの味の秘密に僕はひとしきり感服したのでした。

我が家の『マルガリータ』
・レモン・ジュース(通常はライム・ジュース)1
・テキーラ 1
・クワントロー 2分の1

以上を混ぜてシェイクするのだが、我が家ではシェーカーなど使わずに、何か適当なボトルに入れて十分に振り廻してかき混ぜ、キューブ・アイスを入れて冷やしたグラスに注ぐ。
もちろんレモン・ジュースで湿らせたグラスの縁に添える塩として、前述のベンソン先生推奨の“メキシコ産岩塩”を塗り付けておくと、テキーラの風味を豊かに引き立ててくれて、一段と旨いマルガリータが出来上がるというわけである。